2024年08月04日

CH32V203で遊ぶ(その6)クロックアップ

 前回の記事で CH32V203 に TFT 液晶 MSP2807(320 x 240 dot)を接続した環境でのライン描画の高速化から端を発して新たな高速ライン描画法を提案しました。
 今回はレジスタ直書込みによる高速化と CH32V203 のクロックアップによる変貌ぶりについて記録して置きたいと思います。


1.はじめに
 以前から認識はしていたのですが、CH32V203 は今回使用している開発環境(MounRiver Studio)のディフォルト設定では外部クロックを使用する設定になっていて、今回のように外部クロックを接続していない状態では内部クロックを使って 8MHz で動作します。
 言わばこの大リングボール養成ギブスを付けた状態で今までグラフィック描画の高速化を試みてきました。今回はレジスタの直たたきによる高速化を行った後に、クロックアップにより羊の皮を脱ぎ捨てた CH32C203 の真の実力について記載します。


2.レジスタ直接制御による高速化
 サンプルプログラムの記述に従ってC言語で開発するとペリフェラルのステータス確認の度にサブルーチンコールし、サブルーチンの中では対応ビットをANDチェック後の状態(ゼロか否か)により、リターン値を設定するようなまどろっこしい処理になってしまいます。特にライン描画のような繰り返し回数が多い処理ではなるべくステップ数の少ない実装にしたいものです。
 そこでステータスの確認とデータの書き込みをレジスタ直アクセスにしてみました。レジスタのアドレスやステータスのビットの定義についてはディバッガでトレースすれば容易に確認でき、これらは ch32v20x.h や ch32v20x_spi.h のファイル内で定義されています。
 参考として SPI1 関連のレジスタとステータスレジスタのビット構成を下表に示します。

SPI1 関連レジスタ
SPI1 ステータス

 下図がレジスタ直制御対応前と対応後のロジアナ波形です。SPI のデータ出力の間隔が短くなり、高速化できていることが判ります。末尾の「4.まとめ」に記載しているようにレジスタを直接制御することで前回の記事に掲載した 512 個の線分を描画するテストプログラムの実行時間は従来の処理から 16% 程速くなりました。

レジスタ直制御対応前のSPI波形
レジスタ直制御対応後のSPI波形


3.クロックアップ
 下図は CH32V203 のクロック系の構成図で、これを見ると HSI(内部クロック)の 8MHz を PLL で18倍まで逓倍したものを SYSCLK にすることができます。

CH32V203 のクロック構成

 今まではディフォルト設定で SYSCLK は 8MHz で、言わばこの大リーグボール養成ギブスを付けた状態で色々高速化を試みてきました。高速化の対処も一通りやった感があるので、この辺で CH32V203 の羊の皮を取り去り本来の実力を見てみたいと思います。
 クロックの設定は system_ch32v20x.c の下記の部分の define 設定を変更することで簡単にできました。

system_ch32v20x.c
/* 
* Uncomment the line corresponding to the desired System clock (SYSCLK) frequency (after 
* reset the HSI is used as SYSCLK source).
* If none of the define below is enabled, the HSI is used as System clock source. 
*/
//#define SYSCLK_FREQ_HSE    HSE_VALUE
//#define SYSCLK_FREQ_48MHz_HSE  48000000
//#define SYSCLK_FREQ_56MHz_HSE  56000000
//#define SYSCLK_FREQ_72MHz_HSE  72000000
/////#define SYSCLK_FREQ_96MHz_HSE  96000000
//#define SYSCLK_FREQ_120MHz_HSE  120000000
//#define SYSCLK_FREQ_144MHz_HSE  144000000
//#define SYSCLK_FREQ_HSI    HSI_VALUE
//#define SYSCLK_FREQ_48MHz_HSI  48000000
//#define SYSCLK_FREQ_56MHz_HSI  56000000
//#define SYSCLK_FREQ_72MHz_HSI  72000000
//#define SYSCLK_FREQ_96MHz_HSI  96000000
//#define SYSCLK_FREQ_120MHz_HSI  120000000
#define SYSCLK_FREQ_144MHz_HSI  144000000

 sysclk が従来の 8MHz から一挙に 144MHz にアップし、SPI のプリスケーラーは2に設定しているので SPI のクロックも 4MHz から 72MHz に変わることになります。流石に SPI のプリスケーラーの設定は変更が必要と思っていましたが、なんとそのままで動作しました。
 こうなると私の安いロジアナ(サンプリングの上限が100MSa/s)では波形を確認できません。最高サンプリング 1GSa/s のオシロで観測した SPI の CLK(水色)とデータ(黄色)が下図です。プローブが安物のせいか波形が綺麗には見えませんが、カーソルで示しているように確かに 72MHz 程度のクロックが出ているようです。ブレッドボード環境でこの周波数で動作していることもすごいですね。

SPI CLK(水色) と MOSI(黄色)


4.まとめ
 数回に渡り、高速化検討をしてきましたが、高速化を一通りやった感があるので今回はクロックを 8MHZ から一挙に上限の 144MHz にアップし、CH32V203 の羊の皮を脱がせて真の実力を見てみたところグラフィック描画はとんでもない速さになりました^^
 120円の CPU でこの速さはとてつもないと思います。接続した TFT 液晶 MSP2807 もすごいですね。

 最後に今回の高速化対応での線分描画時間の測定結果を下表に示します。

Nomethodtime[s]speed ratio
1Before13.1091.00
2Register direct11.3041.16
3Clockup(144MHz)0.62620.94

 X(旧Twitter)に投稿したメッセージに添付した動画を貼っておきます。



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posted by skyriver at 13:50| Comment(0) | CH32V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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